2006年12月分の感想
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桜咲くまで勝負ですッ!
(著:榎木洋子 イラスト:桃川春日子)  集英社コバルト文庫
 高校3年生の室井幸乃が一目惚れしてしまったのはなんと一年生だった。 卒業間近の幸乃は親友・陽子とともにお近づき大作戦を決行する(桜咲くまで勝負ですッ!)
 クリスマス前のある日、陽子はエレベーターに閉じこめられてしまった。そして、そこに出てきたのは謎の妖精オットー。その日から 陽子と一緒にオットーにあってしまった一行は怪事件遭いまくるようになり、怒った陽子は妖精たちの長に直談判することに……。(敵はクリスマスとともに!)  バレンタインを前にして吉本千春は恋がしたかった。そして目にとまったのは成績抜群の帰宅部男子、坂上基だった。(ビタービター・ハートチョコ)
 榎木洋子は全制覇したかに見えてこれは読んでなかったんですよね。

 う〜ん、『影の王国』シリーズと同時期の作品群だけあって、そこまで痛いところはなかったですかね。
 ただ、ちょっと誤字脱字(特に誤字)おおすぎ? きちんと校正してくださいよ……。

 さてと、では順番に感想を。
 ●一話目。
 話そのものはこの話が一番好きかな。自分が恋をしたという事実をきちんと受け止めて、まわりに協力を仰ぎながらも自分の意見を持ってきちんと主導して 恋を進めていく主人公にとっても好感が持てます。
 ただ、主人公の一人称及びセリフががですます調でちょっとカンにさわる感じがします。
 ●二話目。
 不思議なモノに出会ってしまって。。というのはある種パターンですよね。特に榎木作品では。 でも、この本自体のコンセプトを‘高校生の等身大の恋’みたいなところに感じるのでファンタジー入れないで欲しかったな…と思います。
 この方の筆力ならきちんとした日常モノでかけたと思いますよ。
 ●三話目。
 前半は行動倫理がよく分からなかった吉本千春ですが、基の言った「恋に生きる自分が好き」というのは言い得て妙だったかな。後半がらっと変わっちゃうトコとか あんましリアリティーを感じなくてちょっとねえ。基君も「分からせようと思っていったから分かったんだよ」 なんて、ナルシスト入ってない? とか言いたくなるし。登場人物紹介の坂上基の‘帰宅部だがソッコーで帰る’って 「いや、それ当たり前だろっ?」て突っ込みたくなったし。

 全編通して一人称で行くせいか、テンション上げすぎて「いやいや、落ち着け落ち着け」とか言いたくなったところもありましたね。

 あと、幸乃と陽子は演劇部で親友で、千春は学校の後輩っていうことですが、これって読んでりゃわかることなので、「前章参照」とか 「次の章を読んでね」とかそういうのいらないなあと思いました。 (今は、こういうつながりある短編形式の話が多くて、読み慣れてるから思ったのかも知れないですが)

 わたし自身が女子校演劇部の出身なので、男役に関して一言。演じるとは言っても、普段の性格ってそれなりに演技に影響しちゃうわけですよ。 だから、あれだけぼけちゃう幸乃さんが演技でだけカッコヨイ男役をするというのはちょっと無理があるんでないかなあ、と。あと、それなりに 男役したい! て人もいるので1人だけずっと男役ってこともあんまりないかなあ、と。
評価:3+  06/12/07読了

化物語(上)
(著:西尾維新 イラスト:VOFAN)  講談社BOX
 同級生の戦場ヶ原ひたぎの秘密をひょんなことから知ってしまった阿良々木暦はたまたまにも彼女の秘密をどうにか出来るかも知れない方策を知っていて ……(ひたぎクラブ)
 母の日の公園で阿良々木暦は迷子の少女に出会った。彼女もどうやら秘密を抱えているようで……。(まよいマイマイ)
 阿良々木暦は突如、通っている学校のスター、バスケットボール部の神原駿河にストーキングされるようになった。彼女に理由を聞いた 阿良々木は……。(するがモンキー)
 装丁とお値段が微妙な講談社BOXですが、化物語は図書館に入ったので、借りてみました。

 う〜ん、読んでても装丁は微妙ですねえ。
 とりあえず、読んだらひらっきぱなしになってしまう表紙はいかがなものかと思う。(図書館だと箱もついてないですし)
 買うんだったら、価格がこれまた……ねえ。(社会人層向けなの?)

 まあ、それはともかくとして。
 内容はいーちゃんをノリつっこみに特化させたような主人公が、自分が遭ってしまった怪異を契機に、怪異に取り憑かれた個性豊かな女の子と次々出会い、 怪異の専門家のオッサンの力を借りながら、彼女たちを救って惚れられる話ですね。(たぶん、これで合ってる)

 読んでいるととにかくスナック菓子が食べたくなりました。(チープな話ってことか?)
 あと、けっこうなテンションで話が進むので、ある程度読んで集中力が切れると、ここでいっか。と、本を閉じてしまうことも少なくなくて 読むのにもけっこう時間がかかりました。

 えっと、西尾さん自身もあとがきで「馬鹿なかけあいを書きたかった」とか述べているので、それを心に置いて読めば、楽しめるかと思います。 たしかに馬鹿な掛け合いは読んでても楽しいですし、おなかいっぱいな量もありますし。
 掛け合いに伴ってのキャラ立ちもばっちりですしね。さすが西尾維新。ちょっとひねったような萌え、いや蕩れキャラがたくさん(とはいえ、4人か) 出てきます。ツンデレ(ちょっと違う気もするが)、委員長、肉体派、小学生とバリエーションゆたかです。
 ともあれ、私はオンナですし、萌えにも蕩れにも興味はなく、ただただ馬鹿な掛け合いに笑うだけでしたが。

 個人的にはもうちょっとストーリーにも力注いで欲しいかなと思わなくもないですが、ソレをしてしまったら西尾維新では無くなる気もします。 (一話目あたりは香月日輪さんあたりにかかせたらストーリー重視の説教臭い物語が出来そうだ)
 まあ、続きは気になるので、下巻も入ったら借りてきます。
評価:3+  06/12/15読了
→『化物語(下)

零崎軋識の人間ノック
(著:西尾維新 イラスト:)  講談社ノベルス
 『愚神礼賛』こと零崎軋識こと≪チーム≫の式岸軋騎。釘バットを振り回す彼は、人識、双識とともに敵に立ち向かう!
 あ〜、西尾さんinホームグラウンドって感じ。

 戯言シリーズ本編ではあんまり活躍しなかったり、直接対決はなかったり。そんなひとたちのあれやこれや、ですね。
 戯言シリーズから出てきていた人の方がキャラが厚いせいか、作者の愛が入っているのか、主役の軋識より目立っていましたが。

 策士さんも戦闘狂さんも良かったですね。うわっ、この頃からこんなキャラだったの! みたいな(笑)
 人識カワイソー(棒読みで)

 本物のジグザグさんが出ていたのがちょっと予想外でしたね。こんな人だったんだ。

 後は、戯言では過去とされていて、語り部いーちゃんの知らない時代の玖渚友が出てきたり、赤色さんは戯言シリーズ登場時はなんやかんやでそれなりに 丸くなってたんだな〜とか思いました。
 石凪萌太くんは戯言シリーズでの扱いがあーだっただけに、ちょっとしんみりしちまいました。

 まあ、そんなこんなで一読の価値はありました。
 人間試験も図書館に入らないかな〜。(また、それか)

 あ、双識さんは変態でファイナルアンサーですね。
評価:3+  06/12/17読了

遺産 〜Estate Left〜
(著:毛利志生子 イラスト:綾坂璃緒)  集英社コバルト文庫
 母子二人で暮らしていた、明治からある古い洋館。ある冬の朝、小鳥が起きると母親が凍死していた。死因は窓を開けて寝ていたことによる凍死。 天真爛漫でぬけていた母親だがそこまでするだろうかと引っかかるモノを覚える小鳥。しかし、救急車を呼んだり、幼なじみ二人が駆けつけてくれたり、 パニックをしているうちにさらに1人の外人が小鳥の母親を訪ねてくる。
 彼の名前はカイル。カナダ人の小説家だという。彼は死んだとされていた小鳥の父が実は最近まで生きており、小鳥の母親に遺産を残したと告げる。 その遺産とは、恐竜の化石。小鳥の父親はカナダで恐竜の発掘をしていたのだという。
 母が死んだばかりで事実を受け入れがたい小鳥はカイルを追い返そうとするが、片付けなどがタイヘンだという友人の提案で泊めることにする。
 そして、小鳥は何者かに命を狙われ始め……。
 風の王国の毛利志生子さんですね。コバルト作品は風の王国以外これで制覇かな。スーパーファンタジー文庫の『ホームズ・ホテル』も 密かに探しているのですが、なかなかお目にかかりません。

 さて、本編。
 ぬるミステリーですね。読んでいたら流れで犯人が分かってしまうぬるミステリー。(まあ、隠すつもりもそんなにないのかもだけど) ちょびっとだけどラブも入ってます。

 文章が硬質な感じで、主人公にそこまで肩入れしては読めなかったんですが、でもこちらの気持ちと主人公の気持ちのぶれがたいしてなかったので、 周りの状況で気になるモノを頭の中にメモしながら読み進めることが出来ました。
 後半、→ステンドグラス←関連が出てきてからは、一気読みに近い状態でした。(用事があったので純粋な一気読みではなかった)

 あと、主人公自身は背が高いだけのふつうのお嬢さんながら、幼なじみ二人のしっかり具合がすごいですね。かたや工務店の息子で、簡単なリフォームなら するし、かたや旅館の娘で、理論的な考え方で小鳥を守り、警察にも知り合いがいるらしいし。ただ、 この友人二人の設定はちょっとできすぎな感じはいたしますが。まあ、ストーリーを円滑に進めるためには仕方ないかな。

 突っつこうと思えば、いくつか穴はあるのですが、 ファンタジー要素皆無の現代ミステリー(ぬるいけど)で、明治時代の洋館が舞台なんてけっこうツボで面白かったですね。
評価:3+  06/12/18読了

居眠りキングダム
(著:野梨原花南 イラスト:鈴木次郎)  集英社コバルト文庫
 眠たい眠たい古文の時間。気づくと岡野は別世界にいた。銃を握らされた彼はその世界(キングダム)の人々が魔物と呼ぶものを退治することに。
 キングダムで普段話さなかったクラスメートの亘理と出会った岡野は現実でも亘理と話すようになる。突拍子もない夢を語る彼はしかし たゆまぬ努力を続ける人間でもあった。
 岡野に銃を渡してきたキングダムの人間は実は岡野の学校で教師をしており、岡野と亘理にキングダムの内情をもらす。
 一方で魔物も知能を得つつあった……。
 野梨原花南の作品はずいぶんと前にちょーシリーズの一巻目を読んで以来です〜。

 さて、感想。
 読みやすかったのですが、構成やら何やらが中途半端な感じがして、ここがヤマだよ! というところがイマイチ心に響かなかった感じがします。
 特に、雑誌掲載された(らしい)箇所とその後の付け足し箇所の継ぎ目がすごく不自然で唐突に感じました。クライマックスに向かう助走である 亘理くんのあのシーンもベタすぎる感じですし。
 もうちょっとうまく作り込めば、完成度が上がっただろうにとか思ってしまってすごく残念です。

 夢を持って、それに向かって努力しているヤツはすっげえ眩しいって言うところだけはすごく共感できたんですけどね〜。
評価:3  06/12/21読了

マリア様がみてる チャオ ソレッラ!
(著:今野緒雪 イラスト:ひびき玲音)  集英社コバルト文庫
 リリアン女学園二年生はイタリアへと修学旅行に旅立った。イタリアで起こるさまざまな出来事と、予想外の人物との再会。
 読んでから時間が経っているモノで、あらすじがすっげえ曖昧。まあ、気になる方は書店で立ち読みでもしてくださいなってことで。人気作だから 棚があればけっこうどこでも置いてるし。

 なぜ、修学旅行がイタリア!? とか思ってしまったんですが、大聖堂とかが多いからということか? それとも元から予想外さんに会わせるため?
 まあ、いいや。
 修学旅行を追体験してる気持ちで読んでしまいましたね〜。(私らの修学旅行は国内でしたが)相変わらず、些細な日常感がよく出ているなあとか 思ってしまいましたが。

 しかし、修学旅行よりは学園祭が先だろう……。まあ、妹はともかくとしてもさ。

 あと、結局、聖さまはイタリアにいたんだろうか、いなかったんだろうか……。 そこら辺が胆になってストーリーが回るのかなと思ってたんだけどなあ。
評価:3+  06/12/22読了
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マリア様がみてる 特別でないただの一日
(著:今野緒雪 イラスト:ひびき玲音)  集英社コバルト文庫
 リリアン女学園、学園祭前と最中の出来事。生徒会劇はどうなるのーとかお手伝いの瞳子ちゃんと可南子ちゃんのこととか。
 またも、あらすじがテケトーです。
 うん、まあ、最近はamazonさんとかありますからね。(ごまかすな)

 個人的には準備段階と学園祭当日の話を「涼風さつさつ」あたりと合わせて前後編にしてやって欲しかったかなあと思いますね。今回の一冊だとちょっと 急ぎすぎ感が漂っているきがしますし、「涼風さつさつ」あたりはだいぶ前で、「レディGO」とか「チャオ、ソレッラ!」とか挟まっているから よけいに展開を忘れてそうですし。

 祐巳の妹候補二人のエピソードが二本柱であとは祐巳とお姉様のラブラブってトコロですかねえ。
 祥子さまの言葉にはぐっときましたが、いい加減、妹はきまらんかなあ。
評価:3  06/12/22読了
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マリア様がみてる プレミアムブック
(著:今野緒雪 イラスト:ひびき玲音 With山百合会)  集英社コバルト文庫
 アニメのファーストシーズン全話紹介とか設定資料とか、声優さんインタビューとか、ひびきさんの書き下ろしショートコミックと今野さんの 書き下ろしショートストーリー。
 う〜ん、もう完全にアニメも終わってますし、完全に置いてきぼり感のある情報を受け取ってしまった感じ。

 アニメ版の祐麒くんの絵にちょっとショックを受けてみたり、舞台となっている薔薇の館の映像はこんなんかあと思ってみたりという楽しみ方でした。
 コミックはコミックで面白かったですね〜。
 書き下ろしは先代薔薇さまなんかがちらっと出ててもうちょっと長くてもいいのにな〜という感じがしました。

 声優さんのインタビューとか読むと声優ってのは面白そうな職業だなあと思うんだよなあ……。
評価:3−  06/12/24読了
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マリア様がみてる イン ライブラリー
(著:今野緒雪 イラスト:ひびき玲音)  集英社コバルト文庫
ロサ・カニーナ以前。蟹名静は佐藤聖のことを思い、マッチをすった……「静かなる夜のまぼろし」
電車で一緒だったあの子を妹にしたい! その思いはけれど空回りと誤解を含み、歪曲した関係を築いてしまう……「チョコレートコート」
なぜか二年生にのみある桜組。わかっているのはそのクラスの扉は桜の木で出来ていることだけ。謎は謎を呼び、生徒たちの手によるひとつの本が出来てしまう……「桜組伝説」
図書館の古典の本のシリーズはなぜか一冊だけ、色が違うのだった……「図書館の本」
に書き下ろし「ジョアナ」を加えたショートストーリーズ
 あれ、「ジョアナ」だけストーリーを思い出せないぞ……。瞳子ちゃんが主人公だったのは覚えてるんだけどなあ……。まあ、いいや。
 キーワードで短編をこうやってつなげていくのはけっこう好きですね。

 ……「ジョアナ」以外はけっこう好きな話ですね……。だから覚えてるのか……。
 蟹名さまの気持ちに静かに共感してしまった「静かなる夜のまぼろし」も良かったし、「チョコレートコート」なんかは 妹制度の都合上、けっこう起こってしまいそうな事態ですよね……。それぞれに意地があって身動きが出来なくなるなんてちょっとつらいモノがある……。
 「桜組伝説」は別系統で好きな作品。いろんな話が静かに語り継がれていってそうです……。
 「図書館の本」は仕掛けにしてやられました……。祐巳と祥子は昔からつながりがあったんですね。
評価:3++  06/12/25読了
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今月の感想数 9冊

今月のお気に入り
1位『遺産〜Estate Left〜
2位『化物語(上)
3位『マリア様がみてる イン・ライブラリー


感想少ないので低レベルな争いに……



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