エネアドの3つの枝 女嫌いの修道士 (著:樹川さとみ イラスト:木々) 集英社コバルト文庫 |
美人で社交的なミシアの友人ララ。彼女は70代のおじいさんの元へ嫁ぐことになる。彼女を連れて行くのは沈黙を自らに課した修練士セイン。 しかし、奔放なララに振り回される彼は……。 |
エネアドシリーズ2作目。 今回は奔放で情熱的なお嬢さん、ララが主人公。 個人的には「それでもあなたに恋をする」の方が好きでしたが、こちらも王道展開で充分に楽しめました。 序盤の出会いの最悪さ辺りはあんまり楽しめなかったのですが、中盤からのララの過去は非常に良かったです。「それでもあなたに〜」では ただの明るいお嬢さんだと思っていたララさんがああいう生い立ちであんな物を抱えていたとは……。 ラストもちょっとひねってあって良かったです。→縁談をご破算にしてセインとくっつくかと思いきや結婚はするんだ〜! その後で セインと再会ってのも良かったです← 個人的には修道士になるために沈黙を自らに課していたセインが一度しゃべり出した後は、あんなにもすらすらしゃべり出すのが非常に意外でした。 次のシーリアは気になっているキャラなので非常に楽しみです。 |
評価:3+ 07/07/07読了 『エネアドの3つの枝 それでもあなたに恋をする』← →『エネアドの3つの枝 最期の封印』 |
エネアドの3つの枝 最後の封印 (著:樹川さとみ イラスト:木々) 集英社コバルト文庫 |
エネアドの治療士、シーリア。とある役目を負っていることから鬼女と怖れられる彼女のことは女性全般をこよなく愛するヒューリオンでさえ、
苦手としていた。 しかしヒューリオンはある日、そんな彼女が泉の影で泣いているところを目撃してしまい……。 |
エネアドシリーズ3作目。 個人的に気になっていたシーリアさんの番ですv シーリアの出生も相まって、エネアド3部作の中では一番ファンタジー要素に傾いた作品に仕上がっておりました。 ミシアとララのアドバイス役として登場していた彼女は、表情から何を考えてるか分からない人でしたが、その内面はとにかく 思考の迷路にはまっていってしまう方でした。 その出生をちょっと気にしすぎな面もなきにしもあらずな感じですが。 ラブロマンスな面よりは出生の謎の方が比重として大きかったような気もしますが、一度目の出会いも二度目の出会いもロマンス〜でした。 私はラブをそんなに重視しない人間なのでラブ面の評価当てになりません。念のため。(人並みに王道展開は好きですが) ゲオール師と皿のシーンはそれまでとの対比も相まって非常におかしかったです。 |
評価:3++ 07/07/14読了 『エネアドの3つの枝 女嫌いの修道士』← |
図書館危機 (著:有川浩 イラスト:徒花スクモ) メディアワークス |
王子様の正体を知らされてしまった、山猿ヒロイン。それまでの堂上とのかけあいを思いだし、暴走しかける感情をなんとかなだめる郁は……。 一方で、昇進試験も近づいていた……。 |
非常に楽しみにしていたこのシリーズ。 いやいやあ、良かったですね、今回も。 王子様の正体を知って、暴走しかけるのを何とか、自制するのが非常に良かったです。小牧さんも良いアドバイスでしたねえ。 王子様からもなにげなくデートのお誘いがありましたしね!(次巻でちゃんと描いてくれますよね! 有川さん!!) 小牧のLOVEもあいかわらずのようですし。 柴崎と郁の活躍は良かったです。柴崎コーディネートで郁が着せ替え人形のようになっている女子寮の模様が見てみたかった気がしますが(笑) 昇進試験も郁、手塚、柴崎とそれぞれのキャラの違いが出ていて、良かったです。 手塚の弱点も納得だし、柴崎は昇進試験を復讐に変えてしまうし。郁は周囲の予想を裏切るし。 そして、特務機関との攻防も相変わらずですね……。 次巻が最終巻ということですが、これからの図書隊がどうなるのか、手塚兄の思惑はどうなるのかなど、楽しみです。 |
評価:4 07/07/16読了 『図書館内乱』← →『図書館革命』 |
刀語 第二話 斬刀・鈍 (著:西尾維新 イラスト:竹) 講談社BOX |
七花ととがめは砂漠地帯にのこる唯一の城を訪れる。 そこに一人、籠城する城主が、斬刀・鈍(ざんとう・なまくら)の持ち主だった。 |
登場人物は、まにわに(真庭忍軍の略。あんまりだ……)の忍者、七花、とがめ、城主のみ。 たった四名でここまで書けるんだからすごいっちゃすごい。(どこを認めてるのか分からんw) 七花ととがめのやりとりがバカバカしすぎて面白いですな。 でも、話は薄っぺらいか、やはり。とがめに萌え萌えというわけでもないし、この値段は ちょっと出せないな……というのは本音だったりする。 |
評価:3+ 07/07/20読了 『刀語 第一話 絶刀・鉋』← →『刀語 第三話 千刀・(ツルギ)』 |
さよなら月の船 (著:片山奈保子 イラスト:竹岡美穂) 集英社コバルト |
中学生のゆずは多忙な母親と暮らしている。離婚した父親ともときどき会っている。父親は現在、つき合っている女性がいる。 中学では複雑な家庭環境を持つ遠藤君が気になっていて……。 |
「汝」シリーズの方ですね。「汝」は一作目を、やっとこさ読んだ感じでしたが、こちらはすらすらと読むことが出来ました。 ゆずの繊細な心理描写が伝わってくる、一人称文体がポイントかも知れません。 自分とはまったく違うしっかり者の母親との気持ちのすれ違い、離れているのに自分のことを分かってくれる父親。けれど、 その父親は新たな伴侶を見つけてしまっている。その伴侶はいい人なのだけど……。 学校では、いい友人を持って、気になる男の子もいるけれど、彼とのささやかな交流は周囲に誤解されてしまい……。 そんな変化におびえ、内にこもろうとする自分を叱咤激励し、ちょっとずつ変化を見せるゆずの描写が丁寧で非常に良かったです。 読む年代によってもちょっと評価に違いがでてきそうな感じがしますね。 10代のゆずたちと同世代だったらとか、大人になって大人側の事情をわかってから読むかとか(母親の気持ちもわかってしまったし)。 女性か男性かでも違うのかも知れない。 イラストの雰囲気も非常に良かったです。良作。 |
評価:4 07/07/22読了 |
赤朽葉家の伝説 (著:桜庭一樹) 東京創元社 |
山陰地方の山奥に住むという‘辺境の人’。彼らに置き去りにされた子どもがいた。彼女は万葉と名付けられ、平凡な夫婦に拾われて少女時代を
過ごしたが、後に地域の資産家赤朽葉家へと嫁ぐことになる。彼女には幻視能力があり、千里眼奥様と呼ばれるようになる……。 孫娘瞳子視点での千里眼奥様万葉、その娘である毛鞠、そして万葉の孫である瞳子の三代記。 |
始めに一言。面白かったです。 三部構成ですが、語り手はずっと同じ瞳子ちゃんです。一部と二部は彼女が生まれる前の話ですが、 小さい頃に昔語りとして聞いた話ということになっています。 一部は捨て子から玉の輿にのりやがては千里眼奥様と呼ばれた万葉の話ですね。 個人的には彼女の話が一番面白かったです。能力から容姿から人とは違うということを体現してしまっている彼女が、黒菱家のみどりにいじめられ、 やがては望まれて赤朽葉家に嫁ぎ、子どもを産んで、若奥様となっていく過程がよく描かれているなと思いました。 未来視の能力も面白いですね。「空を飛ぶ隻眼の男」といい、かなり特徴的な幻を見る彼女がどうその未来に関わっていくかということはページを めくる原動力になっていました。 二部は万葉の娘、瞳子から見ると母の毛鞠の話。 不良少女からレディース総長としての君臨。そして少女漫画家としての傍目には華麗なる転身。命を削り生き急ぐような人生の中でも親友との日々と別れ、 寝取りの百夜との戦い。一方で影武者を立ててまで、赤朽葉家を保つこともしてるのですよね……。 彼女には母としては失格な面がおおそうですが、とにかく頭が下がるような生き様だと思います。 そして第三部は瞳子の話。現代の平凡な少女である彼女には平凡であること以外は語ることが無く、語られるのは万葉の残した「私は人を殺した」という 言葉の謎です。この謎自体はそんなに謎でもないのですが、それでもなんとも切ないようなものを感じました。 赤朽葉家の女たちの三代記としても非常に面白かったですし、 要所要所で昭和から現代までの歴史的変遷も感じられて非常に興味深く読めました。 |
評価:4+ 07/07/31読了 |
今月の感想数 6冊 今月のお気に入り 1位『赤朽葉家の伝説』 2位『さよなら月の船』 3位『図書館危機』 今月は平均点がやや高め? 良作が多かった気がします。 |