2006年8月分の感想
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ぶたぶた
(著:矢崎存美 CG:杉山摂朗)  徳間デュアル文庫
 ピンク色のバレーボールサイズのぶたのぬいぐるみ。山崎ぶたぶた。性別はおぢさん。
 黒の点目は愛らしく、しぐさもぬいぐるみなのでとっても可愛い。
 しかし、彼は歩き、しゃべり、挙げ句の果てには飲み食いもする。そして仕事はとっても優秀。そんなぶたぶたに出会った人々との 短編連作。
 前々から気になっていたのですが、ようやく手に入れることが出来ました。(古本屋に通い詰め、百円になるのを待っていたw)

 もうね、感想は「ぶたぶた、かわいい〜!!」以上! でもいいと思うんですがね。鼻をもくもく動かして喋るとか、 風で飛んで行っちゃったりとか。もう、女子高生並みにキャピキャピした声で「カワイ〜」というしかないです。
 モデルになった人形の購入を本気で検討したりして(笑)

 ストーリーもほのぼのとしていていいですねえ。登場人物がいちいちビックリしてたりとか。妙なところで現実的。(主人公以外はさも 当然そうにしてたりするんだけど)
 いやはや、たまにはこういう作品もいいですねえ。一服の清涼剤って感じ。
 ほのぼの〜としているのでそういうのがダメな人はダメかも知れないですが。
 ぶたぶたがかわいいと思える方はぜひどうぞ。
評価:3+  06/08/02読了

蛇にピアス
(著:金原ひとみ)  集英社
 「肉体改造してみない?」その言葉に誘われてルイは舌ピアスを始めた。ルイを誘った男はアマという名前だった。 そして、二人は一緒に暮らしはじめる。
 ピアスと刺青をする店を営むシバという男にもルイは惹かれていくが……。
 何年か前の芥川賞受賞作品ですね。芥川賞受賞後の「アッシュベイビー」は読んだことがあったんですが、 コチラの方は未読だったのでちょうど良いなと思って、図書館で借りて参りました。

 「アッシュベイビー」は印象最悪だったんですが、コチラはまだ読めますねえ。いろいろ疑惑はあるもののとりあえずは さわやかな読後感ではあるし。
 「アッシュベイビー」の時も思ったことではあるんですが、芥川賞なんて取るんだから三人称(というかいわゆる神視点)を用いるのだろうと 思っていたら一人称だったり、あとは男と女の営み描写が直接的すぎるよ!とかそういうことを改めて思ったりしました。(前の時はビックリしたけど 今回は覚悟して読んだしね)営み描写関係は特にねえ……。普段がラノベ読みなので、ちょっと「っ……(汗)」とか思ったりはしてしまいます。 まあ、別にいいけどね。

 ストーリーは火曜サスペンス劇場、現代ムスメ語訳という感じでしょうか。舌ピアスやら刺青やらの描写があることはありますが そういうところをのけていくとただの痴情のもつれ小説ですからねえ。舌ピアスやら刺青やらの箇所をエグいと評しているサイトさんもありましたが エグくはないと思います。想像すると痛いなあと思うだけで。
 全体としては手堅い印象ですね。ほどほどにまとまってはいます。ただし、芥川なんて賞をもらえるほどの作品とは思えないですが。
 パンチ力だけで言えば、「アッシュベイビー」の方が強かったかなあと思いますけどね。
評価:3+  06/08/05読了

イン・ザ・プール
(著:奥田英郎)  文藝春秋
 注射フェチでデブでオタクでマザコンな精神科医、伊良部。
 彼の診療方針はカウンセリングはしない。理由は嫌いだし、面倒くさいから。
 そんな彼が担当した患者たちは彼をいぶかりながらもやがて治っていく……。
 そんな患者たちの5編の短編集。
 なんかの書評で見たことがあって、たまたま学校の図書館で見かけたので借りて参りました。

 3編目の「コンパニオン」で主人公が伊良部にたいして‘もしかして名医?’と言う言葉を使っているのだけれど、 読後感はまさに「伊良部先生ってばもしかして名医?!」というものでした。
 読書中、特に2編目の「勃ちっ放し」まではデブでオタクでマザコンで、おまけに超がつくほどの自己中な伊良部には反感を覚えることも多くて、 こんな医者には絶対に罹りたくないよ!!とか思ってましたが、4編目の「フレンズ」でほろっときてからはちょっととらえ方が変わったかな。
 意図的なのかまったく意図していないのか、伊良部の行動は最後までどちらなのかわからないけれど、だからこそ「もしかして名医」の ‘もしかして’と言う言葉が印象的だったりして。

 我慢して我慢して我慢して……生きるよりは、たまには自分に忠実に生きてみてもいいんじゃない? というメッセージを受け取ったような気がした小説でした。

 短編連作で読みやすいので、気楽にどうぞ。
評価:3+  06/08/06読了

月曜日の水玉模様
(著:加納朋子 イラスト:秦野くみこ)  集英社
 小さな商社に勤めるOL、片桐陶子。彼女には通勤電車でかならず座るために目を付けていた男がいた。名前も知らない男。しかし、 会社荒らしのウワサが持ち上がったころ、陶子は男に話しかけてみる。彼の名はリサーチ会社に勤める萩広海。
 陶子と広海はたまに会っては、身近に起こる小さな事件について話すのだが……。
 軽い気持ちで読める日常の謎系連作短編ミステリー。
 加納朋子さんということで安心して借りてきたのですが、ちょっとこの方にしては微妙ですね。 もっと面白い作品を書ける方なのにな。ちょっと残念。

 軽くさくさく読めることは読めるのですが、後に残るものも少ない感じでした。
評価:3  06/08/08読了

コッペリア
(著:加納朋子)  講談社
 「僕が恋したのは人形だった」
 アングラ劇団で人形役をすることになった聖子。彼女は他の劇団員とは違い、パトロンを得ることで働くことなく演劇をしていた。
 そして特異な存在感を持つ人形を生み出す人形師まゆら。まゆらは気むずかしいことで有名だった。彼女に隠された過去、そしてまゆらが 作った聖子そっくりの人形とは……。
 加納さんと言うことで、短編連作日常の謎ミステリかな、と思っていたら、長編でございました。 (同じ作者と言うだけで別作品に特攻かけるクセ在り……)しかも日常の謎ではなく普通のミステリーですね。

 いやはや、華麗にキレイに騙されました。後半、ええっ〜そうなのぉ、と。
 祖母の家の人が常にいるような部屋で読んだのでイマイチ集中できなかったので伏線に気づけなかったって言うのもあるかな。 せめて、最初に思ったとおり、メモをとりながら読めばよかったなあ。
 中盤まではアンティークドールっぽいというか、黒くて暗くてドロドロした感じなのだけれど、最後はさわやかに終わりますね。

 う〜む、こういうのもいいけど、加納朋子さんは日常の謎系連作ミステリの方が好きだなあ。  ともあれ、この作品はもう一度読み返したいけど。
評価:3+  06/08/09読了

電子の星 池袋ウエストゲートパークW
(著:石田衣良)  文藝春秋
 タカシの元ボディガード、ツインタワー1号2号がラーメン屋を開店。しかし嫌がらせに会ってしまう。(東口ラーメンライン)
 道路にいけられた白い花。そんな場面でマコトはとあるタクシー運転手と出会う。(ワルツ・フォー・ベビー)
 マコトの果物屋の前を通ったのは一人の少年。彼はじつは訳ありで……(黒いフードの夜)
 山形からやってきた少年が持ち込んだ事件は失踪事件だった。しかしそれはとある超高額バイトにつながっていき……(電子の星)
 毎度池袋ウエストゲートパークです。父がこないだテレビ出演していた石田衣良を見て「あ〜、あれやろ、東京フレンドパークのひとやろ!」 と言い放っておりましたが。(それはテレビ番組ですっ)

 さて、感想。
 私はラーメンはそんなに好きな方じゃないんですが、七生のラーメンは食べてみたいかも。醤油ラーメンならわりと好きだしね。しかし ツインタワー1号2号がこんなカタチでGボーイズを抜けるとは……。ちょっと意外。
 今回の話の中では東口ラーメンラインが一番ほのぼのですね。

 ワルツ・フォー・ベビーはいつもに比べてやや暗い話だったような。この巻の中では一番印象が薄い話。

 黒いフードの夜。この巻では話自体としてはこれが好きかな。ラジオくんがえらく久々だなあと思いましたよ。
 これからも日本で暮らすのは大変だろうけどサヤーには頑張って欲しいなあ。

 電子の星。グロいですね〜。こういう描写に弱い方は注意が必要かも。サルが久々登場かな? 彼も順調に出世してるみたいですね。
 実際にこういうビデオってあるのかなあ。断髪ショーとかシャンプービデオとかなら売っているサイトさんを見たことがあるんだけど。 (それもそれでなんだかなあ……w)
評価:3+  2006/08/11読了
骨音 池袋ウエストゲートパークV』← →『反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークX』

子どもたちは夜と遊ぶ 上・下
(著:辻村深月)  講談社ノベルス
 同じ大学に通う浅葱、狐塚、月子、恭司。彼らの生活はゲームという名の連続殺人によって徐々に蝕まれていく。
 そしてやがてやってくる結末とは――。
 わりと名前を聞く作者さんなので、いっちょ読んでみるかなと図書館から借りてきました。本当は「冷たい校舎の時は止まる」に したかったのですが、借りられていたのですよ〜。「冷たい〜」の方が面白いみたいですね。予約かけとこうかな。

 主人公たちが真っ当な大学生っていうのがラノベ慣れした私にはちょっと新鮮。身に引きつけて考えやすかったですね。
 大学生ということでタイトルの「子どもたちは〜」て部分に大学生が子どもかよと突っ込んでいたのですが、読了後は納得。たしかに子どもですね。 大人とは言い難い。
 中心事件となることに関してはそれなりに予想を立てて読んでたんですけどね〜。→二重人格←には 思い至らなかったですね〜。まだまだミステリーに関しては未熟だわさ。でもちょっと‘それは反則’と思ったのも事実(笑)。 白状すると→iは恭司だと思ってました。あんまり出てこないし、内面もそんなに語られないしさ
 あとは月子ちゃんですね。これも見事に騙されたというか、思い至らなかったというか。

 ええっと、読んでて連想した作品を羅列してみます。
 「ハチミツとクローバー」仲間たちの関係がなんとなく似ているなあと。
 「暗黒童話」、「Missing」眼球の一言に尽きます。
 「空の境界」二重人格部分から〜。
 今回の連想本はキーワードからの連想が多くて参考にはならんやも……。

 ともあれ、作品は非常に楽しめました。
上 評価:3+  2006/08/17 読了
下 評価:4−  2006/08/19 読了

マライアおばさん
(著:ダイアナ・ウイン・ジョーンズ  訳:田中薫子 画:佐竹美保)  徳間書店
 ミグと兄のクリス、そしてお母さんの3人は崖から落ちたらしく生死不明の失踪状態のお父さんの義理のおば、 マライアおばさんの家を訪ねることになった。
 しかし、いざ訪ねてみるとおばさんの住む海辺の街は子どもがひとりもいず、男たちはゾンビのように生気がない。 おまけにクリスの部屋には幽霊が出るらしい。陰気な街で元気なのはマライアおばさんと取り巻きのおばさんたちだけだった。
 マライアおばさんと取り巻きたちに召使いのようにこき使われる、ミグとお母さん。反抗したクリスはとんでもない目に遭い……。兄のクリスを助けるため、 ミグは画策し始める。その過程で知ったことは……。
 私にとっては4作目のダイアナ・ウィン・ジョーンズになります。

 全体を通してみるとまあまあ面白かったのですが、前に読んだ作品がミステリーだったためか、頭が現実的なモードになっていて、 ファンタジーに「反則技じゃん!」とつっこみかけました。(苦笑)ネタバレになるので隠しますが具体的には →魔法ということや、問題解決のために時間旅行を使ってしまうところですね。特に時間旅行。
 ストーリーは基本的にミグに感情移入をして読んでいたので、ミグと一緒に一喜一憂でした。クリスがとんでもない目にあったときも 信じようとしないお母さんになんで信じないんだよ! とか。あ、でも、いつの間にかミグのお母さんがクリスがとんでもない目にあったことを 理解してましたね……。あそこの過程がイマイチ分からなかった。

 まあ、全体を通すとまあまあ面白かったですね。マライアおばさんのように自分が正しいと思いこまないように気をつけたいものです。
評価:3+  06/08/23読了

花に降る千の翼 碧翠の剣
(著:月本ナシオ イラスト:増田恵)  角川ビーンズ文庫
 前巻での奮闘が認められてか、イルアラに議会への招集状が届く。しかし、喜びもつかの間で議会では隣国の王子で剣聖の称号を持つスラトとの 見合いを勧められる。スラトとの見合い話は一度、先方から断られたはずの縁談であった。
 一方で、タリマレイには謎の獣が出現するようになり、精霊たちもさわがしい。イルアラを守るためエンハスは夜回りの数を増やすようにする。 その当人であるイルアラは翼を持つ美女からエンハスを返してと言ったらどうすると問われ、とまどい……。
 古本屋で捕獲。2巻目ですね。登場人物の紹介文は直して欲しかったなあ。

 時々、文章に引っかかりを覚える箇所がありましたが、ストーリー全体は良くなっていたかな。相変わらず、ご都合主義に見える所も ありましたけど。ネタバレ→王子一行の延着と罠にひっかかった謎の少年を誰かくっつけて考えてみろよ! とか、そもそもイルアラの見合い話はいくら内密にとは言ってもそれこそすごいうわさ話になってそうだよ! (あ、だからエンハスの所にウワサが届いたのか。でももっと早く届いてそうな気はする……)とかですね。←ネタバレ終わり。
 それにしても、テミファの反応は面白かったですけども、シーハン王の登場は蛇足だった気がしますねえ。 あのままではタリマレイの平和ボケ諸君は誰も王子に気がつなかさそうだったとかはともかくとしても。

 ストーリーは陸側が大変なことになっていそうですが、それがタリマレイにも影響してくるのかな……。今回、イルアラの身に起こった こととかと考え合わせてちょっと気になるところ。
 あとは、イルアラの妹姫タリアとハヴィールの行方が気になるなあ……。主人公コンビは、このままではどうにも進展しそうにないんですもの。 タリアとハヴィールの方がまだ進展が見込めそうです。
 ん〜む、それにしてもイルアラがハーレム状態になりそうなのがちょっと気になるところですが、まあ、続きが気になるので古本屋に ちょくちょく通って捕獲してきます。
評価:3+  06/08/25読了
花に降る千の翼』←

図書館戦争
(著:有川浩 イラスト:徒花スクモ)  メディアワークス
 メディア良化法が施行された日本。図書館は図書館法を盾にしてメディア良化機関に対抗する。警察は当てにならないと 武装までする。良化機関と図書軍の戦争は激化してばかり。
 笠原郁は高校生の時にピンチの自分を救ってくれたあこがれの王子さまを追って図書隊に入隊してきた。 しかも第一希望は内勤ではなく軍隊の方。そして山猿と呼ばれる彼女は超優秀な同僚とともに 生え抜きしか選抜されないという特殊部隊へと入隊するが……。
 図書館から借りてきた、「図書館戦争」です。

 あ〜、面白かったですねえ。
 正体バレバレな王子さまと全然気づかない山猿ヒロインのかけあいに大笑いですよ。王子さまが報われないながらも それなりにヒロインをかばったりね。う〜ん、ツボだ。

 郁の同室の柴崎さんもあなどれなくて好きですね。「笠原からも学ぶところはあるだろう」て言われて変な方向に走ってしまう 手塚さんも面白くて好き。郁と手塚の上司たちも好きだし。というか、今回、嫌いなキャラクターっていなかったかも。
 キャラクターは割と生き生きと描かれているし、個性的だし。その分、メディア良化法関連の話とか堅い話の時は読みづらかったですが。 まあ、話を盛り上げるためには必須なので許容範囲〜。

 設定周りはそれはおかしいだろ!って突っ込みたくなるところもあることはありますが、まあ、パラレル日本のことだと思えばいいので オッケーです。
 続編に期待。
評価:4+  06/08/26読了
→『図書館内乱

嘆きのサイレン クラッシュ・ブレイズ
(著:茅田砂胡 イラスト:鈴木理華)  C☆NOVELS fantasia
 ジャスミン・クーアは夫のケリーとともに政界を引退したマヌエル一世の個人的依頼で、原因不明の事故が続く恒星クレイド 周辺へと向かうことになった。
 「ねえ、歌が聞こえない?」
 いざ、クレイド星系へと向かうとパラス・アテナの感応頭脳であるダイアナがそういいだし、暴走を始める。 完全に酔っぱらいと化した感応頭脳にジャスミンとケリーの行方は……。
 と、いうことでクラッシュ・ブレイズです。

 もう、完全に「スカーレット・ウィザード」及び「暁の天使」の続きとしか言えないですね。(この定義で行くと「デルフィニア戦記」は スカーレットの番外編ということになるのかしら……。)まあ、いいや。少なくとも「スカーレット」と「暁の天使」はストーリーを 楽しむために必読であるとは言えますね……。
 と、いうか、ぶっちゃけコレ読まなくても困らないですけどね。茅田作品なら「スカーレット」と「デルフィニア戦記」を よんでおけば充分じゃないかと思い始めましたよ。そして、誰か気に入りキャラが出来たなら、「暁」、コレと読みすすめるべきですね。

 なんかごちゃごちゃ言ってますが、エピソードエピソードは楽しめましたよ。なんだかんだでキャラは立ってるので。
 ただシリーズ全体の大筋の目的みたいなのがないので、散漫すぎる印象を持ってしまうんですよね。各キャラ、力が大きすぎるので 暴走具合がすごく目立ってしまう……。

 茅田さん自身はこういう一話完結みたいなのが最初からやりたかったのかなとは感じましたが、この最強キャラ連発シリーズでは一本柱がないと ただただ散漫な駄作になってしまうなあ、残念だなあと、思うんですよね。

 とかいいつつ、次作、待機してるんですけど……。
評価:3  06/08/30読了
→『スペシャリストの誇り クラッシュ・ブレイズ

 今月の感想数 12冊



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